衆院予算委の国会中継は、ちょっとしたプレゼンの場でもあるので、作業の合間にラジオ感覚で流すことが多い。
今日は久しぶりに中継を流していたが、ふと手を止めてテレビに目を向けた。その理由は、総理の話し方だった。
これまで私が見てきた数少ない質疑応答の場では、あらかじめ用意された答えを棒読みし、質問者を見もしないまま早口で応える姿が目立っていた。そして質問が終わると、ドスンと椅子に戻る――そんな光景が定例となっていた。
しかし、今日は過去とは違うものが繰り広げられていた。
総理は相手の質問をしっかりと受け止め、賛否を問わず、自分の意見を丁寧に、ゆっくりと届けていた。その話し方からは、ただの答弁ではない「考え」と「想い」が感じられた。伝え方そのものが相手を尊重し、真摯に応えようとする姿勢を表していた。
さらに驚いたのは、空気感の変化だった。最初は攻撃的だった議員のトーンが、総理の受け答え方に引きずられるように次第に柔らかくなっていった。
何を言うかはもちろん重要だが、どう伝えるか――さまざまな心理状態にいる相手に丁寧で落ち着いた語り口で、わかりやすく届けることが、どれほどの力になるのかを目の当たりにした。
実は、この話し方には“エデュケイト”というテクニックが潜んでいる。
まるで教授が学生に分かりやすく説明するかのように、相手に寄り添いながら、必要な情報を的確に届ける方法だ。シンプルで丁寧な語り口が、相手の理解を深めるだけでなく、その場の雰囲気までも変えてしまう。
ブログだけ情報として、総理の話し方にはこのエデュケイトに付け加えて、必ずアイスブレイクを入れる”共感”という話し方を先に入れる。これを入れることで、同意をしない意見でもクッションとなり相手も理解をしやすくなるテクニックが入っている。これは凄い!
特に国会という場では、意見の対立や同意できないことも多いからこそ、このようなテクニックを入れていく必要があるのだろう。
日本をより良い国へと創り上げていくためには、さまざまな意見を尊重しながら議論を進める必要がある。
そのためにはまず、「人に耳を傾けてもらうこと」が大前提だ。そこには「この人は何を言うのだろう?」と思わせるような伝え方が求められる。
そのカギが「自分の考えを込めて伝える」ことだと気づかされた。
これは私自身の仕事にも重なるところがある。
最近、300名ほどのアンケートを採点している。
その中で特に印象に残るのは、「なぜそう思ったのか」「知った情報をどう活かそうと思っているのか」を自分の言葉でしっかりと書いている回答だ。
ただ「楽しかった」「良かった」といった抽象的な言葉ではなく、自分の考えを丁寧に伝えようとする姿勢には、会ったことのない学生であっても、その誠実さを感じ、好感を抱く。
文章を通してさえ信頼を得られるのだから、日常のコミュニケーションであればなおさらだ。
ありきたりの返事や、用意された言葉、抽象的で形式的な返答では、人間関係を深めることにはつながらない。
この「伝え方」の工夫が、相手に「しっかりと話を聞いてもらえた」と感じさせ、心を満たし、より良い関係性を創り出していく。
だからこそ、今日の中継のように、たとえ対立する相手であっても、総理の話し方に触れて心が軟化し、「歩み寄り」の姿勢へと変化したのだろう。
この話し方のコツをさらに深く知りたい方は、オンライン講座で受講可能です!
「その場でしっかり考え、心を込めて伝える」。
それがどれほど人の心を動かすのか――。作業を止め、最後まで国会中継を見続けていたことが、その答えだろう。
この経験を機に、私ももう一度自分の伝え方を見直してみようと思う。
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